鋳物の街・川口、鉄道の街・大宮、ともに鉄に縁の深い「ものづくり」の街です。日本の近代化を象徴する「鉄」に関わって、成長し、変化してきました。
そんな二つの街で、SMF関連の街歩きイベントが連続して企画されました。10月8日(土)の川口「銭湯のある街歩き」、同じく23日(日)の「大宮アート散歩」です。川口は庶民文化研究家の町田忍さんが講師をつとめる企画。大宮のほうは自分のナビゲートで、秋の二日を歩きました。
まずは川口から。この街歩きは、「工場と銭湯」—川口へのオマージュ—というKAWAGUCHI ART FACTORYでの展覧会の関連イベントとして行われました。キューポラの街と言われるように、屋根の上にキューポラを突き出した鋳物工場が多く立地していた川口。そこで働く人々にとって、仕事を終えた後の銭湯というのは、なくてはならないものだったと、町田さんは語ります。銭湯の密度という意味では、首都圏でも指折りのエリアだったそうです。それが、時代の変化を受け、鋳物工場が高層マンションにとって変わり、銭湯も激減してきたのです。かろうじて残る、熱かった時代の痕跡を、街のディテールに読み解いていく街歩きでした。
金物屋さんの店頭でなつかしい品々を見つけたり、KAWAGUCHI ART FACTORYでは、川口の銭湯を写真や
地図・銭湯ペンキ絵から浮かび上がらせた展示に見いったり、街角で出会ったおじさんに歴史を語っていただいたり、最後はみんなで銭湯に入って、時間までスリップしたような体験をしました。
そして大宮です。直前に川口を歩いたために、ものづくりの街という視点が加わりました。川口が多くの鋳物工場の集合だったのに対し、大宮は国鉄大宮工場という圧倒的な存在が君臨し、鉄道の分岐点という意味でも、人とモノの一大集積地でした。さらに氷川神社というコスモロジカルな聖域に裏打ちされた、厚みのある都市であり続けています。
そんな大宮のラフスケッチに、細部を描いていくのには歩くという作業が必要です。参道から路地へまた大通りへと道を折れるたびに、時間と空間がジャンプするようです。駅近くの商店街や一部ビルの内部も含めた目くるめくような変化から、氷川様から盆栽町あたりの落ち着いた空間、さらには大宮駅西口の新しい街区まで、大宮の迷宮をめぐりました。参加者の歩計から推測すると、15キロにもおよぶ強行軍でした。
大宮については、さらに情報を集めて、アートマップにまとめる予定です。(Y.A.)
「アートとブックのコラボレーション展―出会いをめぐる美術館の冒険」11/23~1/22
うらわ美術館の「本をめぐるアート」のコレクションと北九州市立美術館の近現代美術のコレクションが、多種多様にコラボレートします。
「アンリ・ル・シダネル展」11/12~2/5
フランスの画家、アンリ・ル・シダネルの全貌を、日本で初めて紹介する展覧会です。薔薇の庭、木漏れ日などの柔らかな雰囲気が、観るひとを優しく包み込みます。
「第15回むかしのくらしと道具展」12/17~2/12
市民のくらしや地域の様子をたくさんの生活用具や写真で紹介します。石臼や手作り玩具などの体験コーナーを設け、休日には親子で楽しめるイベントも多数開催されます。
「ミロ展」11/5~12/11
スペインを代表する芸術家、ジョアン・ミロの初期から晩年までの版画作品を一堂に展示します。
今回は、川越市立美術館をピックアップします。
来館した日は、ちょうど川越ミュージアムロードWeプロジェクトの真っ最中。札の辻交差点から商店街に入ると、時の鐘が描かれた色とりどりの旗が導いてくれます。ワークショップで子どもたちが作った一枚一枚の旗を、ほほえましく見ているうちに、美術館に到着しました。
地下の展示室へ向かおうとすると、階段にきれいなオブジェを発見! これは、昨年度結成された美術館ボランティアの方が主導して開催された、ワークショップの作品だとか。クオリティの高さに驚かされるとともに、ボランティアの方たちの充実した活動ぶりがうかがえます。
そしていよいよミロ展の会場へ。展示室に入ると、まずカラフルな色彩が一気に目に飛び込んできます。そして、彼の愛した故郷と自然をモチーフとした抽象表現により生み出された独特な造形に、心踊らされます。さらに作品を近くで見てみると、様々な技法が巧みに組み合わされ、一つ一つ異なる表情を見せる作品の奥深さを感じ、いつまでも見ていたくなりました。
展覧会会期中には、講演会やギャラリートーク、ワークショップなど多数のイベントを開催。企画展・常設展の他にも、「タッチアートコーナー」や、毎月第4土曜日に開催される「ジュニア・アートスクエア」など見どころはつきません。
街歩きとともにアート鑑賞、何度でも訪れたい川越の街でした。(H.O.)
(取材協力:川越市立美術館 田中晃)