SMF Press創刊号(2010.7.1)表面

SMF(Saitama Muse Forum)とは?

SMFは、アートの風を起こす〈風車〉をシンボルとして結成されました。埼玉県立近代美術館に事務局を置き、美術、建築、音楽、文学、ダンス、パフォーマンス、地域活動など、さまざまなジャンルで活躍するメンバーが集っています。発想豊かに、広く地域を巻き込んだアートプログラムを企画・実現すること。そこで知り合った人の縁をまた次の展開へと繋げていくこと。アートと市民とミュージアムの関係を深め、可能性を広げるネットワーク作りが、SMFの大きな目標です。
「LINK!ミュージアムからアートの風を!!〈アート竜巻フェスタ〉」と題した2008年度、「SMFアートのわっ!–あつまれアートのつむじ風」と題した2009年度(※詳しくはSMFホームページの活動記録をご覧ください)。浦和を中心に、川越、入間、鳩山、川口の、県内5か所を巡って開催したプログラムに参加・ご協力いただいたボランティアは、2年間でなんと1000人を超えます。そこでどんな出会いと交流が生まれていったのでしょう。そしてこれから吹く風の色と行方は・・・?
まずはSMFの看板ともいえる「風車プロジェクト」のエピソードを、どうぞご覧ください。(A.O)

アートの種が芽を出すとき

「風車(かざぐるま)プロジェクト」は、美術家の根岸和弘さんの監修のもと、県内各地に色とりどりの風車の風景を生み出す企画です。大規模かつ、ひとつひとつが手作業である風車の制作と展示を支えるのは、SMF の呼びかけに応えて集まった大勢のボランティアスタッフたち。その1人として、私は2008年から参加しています。埼玉県立近代美術館で風車を1000本一緒に作るボランティアを募集していることを知り、「これは行くしかないでしょ!!」と工作大好きな私は参加しました。
と、ここまでの勢いはよかったのですが、実際美術館に行ってみると知らない人たちの間で戸惑うばかり…。そんな私に根岸さんやボランティアの方々が優しく話しかけてくださり、私はだんだん美術館に行くことが、毎週の楽しみになっていました。何回か通ううちに、この場はとっても面白い空間だということに気づきました。ボランティアの方々の中には学校の先生から学生、主婦の方までいらっしゃり、ここでは日常生活の中で、一緒に同じことをする機会が少ない立場の人が共同作業をしていたのです。「風車を1000本作る」という目標の下、一所懸命風車を作っていく姿が、とてもいきいきしていたことが忘れられません。そんな元気な皆さんと作った風車は最終的には、1500本を超えました。

東京電機大学鳩山キャンパスでの風車の展示こうしてできた風車でアートの風を起こそうと、県内5か所を回った「アート竜巻フェスタ」では鳩山会場でのことを印象深く覚えています。
2008年9月、東京電機大学鳩山キャンパスで風車の展示が行われました。他の大学に行く機会なんて滅多にないので、私はちょっとわくわくしていました。この時の展示会場はシャープな建物に囲まれた芝生の中庭でした。
そんな雰囲気のある会場でサクッ、サクッと大勢で風車を地面に垂直にたてていました。ふと、誰かが「なんか植えているみたいだね。」と言いました。その言葉を聞いて、ふっと前を向くと、目の前にはたくさんの人が1本1本丁寧に、大事に風車を植えている光景がありました。みんな、種を蒔いている。
「植える」という言葉が発せられた瞬間、風車に命が吹き込まれました。風車が種になり、大輪の花を咲かせ、風を運ぶ。それまでは風車を展示して、見て終わりだと思っていましたが、実はそうではないことに気づ きました。これは始まりであって、ここから埼玉のアートの風が吹くのだと。そんなことを強く感じた出来事でした。
東京電機大学鳩山キャンパスでの風車の展示また展示会場が建物に囲まれた空間という特徴の鳩山会場ならではの企画がありました。大学のご厚意により、特別に屋上に上ることができたのです。屋上は普段、学生でも上ることができないそうです。気のせいでしょうか?屋上に上れると聞いた瞬間全員の目が輝いていたように見えました。禁止されている場所に特別に入れるということは、人の好奇心をかき立てるようです(笑)。隙間から下が見えるちょっと怖い階段を頑 張って上ってしまうと、目の前には広い空と森があり、ずっと向こうにはまちも見えました。その一方、足下にはなんと、1000本の風車が人のかたちを描いていたのです。それはとても幻想的な景色でした。地上で展示している時はまさか人のかたちになっているとは思いもよらなかったので、これはまさに屋上からしか見ることができない。貴重な体験ができました。

昨年11月、前年に蒔いた風の種の芽が出始めました。北浦和公園に今度は4000本もの風車が回りました。公園中を風車が埋め尽くし、まるで違う世界に飛んできたかのようでした。
そして風は吹き止むことなく、今年も風車がやってきます。「アート楽座@KITAURAWA風の記念日」では、アートの風がさらに拡がることを祈って、風車の制作ワークショップも行われます。その他にも風車の展示や、不思議な〈芽出るカー〉の周辺で写真をとることができます。2010年7月18日、北浦和公園にぜひ遊びにきてください!!(H.S)

SAITAMA連携美術館情報

現在SMF に参加している、県内5つのミュージアムを紹介します。

埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館

青空を格子で切り取るモダンな建物は、建築家黒川紀章の設計。モネやシャガールなど巨匠の絵画のほか、来館者が自由に座れるグッドデザインの椅子のコレクションも人気。
SMFでは2年続けて大規模なアートイベントを開催し、事業設立から現在までSMFの拠点として機能している。


うらわ美術館

うらわ美術館

さいたま市ゆかりの美術に触れて地域の色を再発見。しかし何といっても注目すべきは、1000点を超える「本をめぐるアート」のコレクション。
2009年度にはSMF事業として、幼児から高齢者までがコミュニケーションしながら楽しく活動する、多世代交流ワークショップを行った。

川口市立アートギャラリーATLIA

川口市立アートギャラリーATLIA

一面ガラスの明るく開放的な空間で、美術とお茶を楽しむひととき。アーティストを招いてのワークショップも盛ん。
2008年度SMFでは風車の野外展示や創作ダンスの公演、2009年度には、ものづくりのまちの歴史と個性を見直しつつ、美術をツールにした新たな場作りについてのシンポジウムを行った。

川越市立美術館

川越市立美術館

蔵造り商家を模した“小江戸”らしい外観。一歩足を踏み入れれば、歴史のまちからアートの世界へタイムトリップ。観光地だけではない川越の魅力がきっと見つかるはず。
2008年度SMFでは風車の野外展示や創作ダンスの公演、2009年度には、市内のアートスポットを巡る散歩会とマップ制作を行った。

入間市博物館ALIT

入間市博物館ALIT

地域の歴史・民俗・自然・文化等に関する情報を集め、美術館的機能も併せ持つ。緑一色ののどかな景色と豊富な“お茶”の資料が見どころ。
2008年度SMFでは風車の野外展示や創作ダンスおよび大田楽の公演を行い、2009年度には、SMFの活動報告と告知のコーナーを設置した。
(A.O)

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