SMF PressVol.3(2010.11.1)表面

作曲家柴山拓郎とヘンテコな音楽!

「私は、学生たちと普通の音楽を楽しんでおられる方々からするととてもヘンテコな音楽と思われてしまうような音楽を心底楽しみながら作っているんです。」柴山拓郎氏は自己紹介の時にいつも決まってそう言う。ヘンテコなことを言っているぞ、とこちらはいぶかしむ。当人はなんとも楽しそうに話を続ける。
柴山氏は現在、東京電機大学理工学部情報システムデザイン学系の講師をしている。そこで作曲・音楽文化研究室という研究室を設け、日々学生たちと研究・創作活動を行っている。先日そこの研究生たちと談を交える機会があり、「いつもなにやってるの」と聞くと、「みんな好き勝手なことをやってます」と返事が返ってきた。彼らもまたなんだか楽しげだった。

音モンタージュワークショップ
MOMAS 音モンタージュワークショップ(2009年)

大学3年の時にコンクールで入選、その後大学院を出てほどなく結婚。自分の曲がCDに収録されたり海外で演奏されたりし始め、その頃は「このままいけばまあいわゆる作曲家としてやっていけるんだろうな」と考えていたそうだ。しかし2001年の9.11を契機に、「このまま続けていても仕方ない」という気分になって、作曲以外の勉強を色々し始めた。社会的な動きに敏感になるよう心掛けたり、イラク反戦活動に没頭したりもした。そういった経験を通じて、「音楽」や「文化創造」に対する考え方が変わってきたそうだ。そんな時間を過ごしながら、五線紙に音楽を書くような作曲を完全に放棄。美術とのコラボレーションや電子音楽・コンピュータ音楽といったものに活動の軸足を移す。その後に埼玉県立近代美術館の中村誠氏と知り合い、SMFの活動に加わる。
SMFでは2008年度・2009年度と「音楽という表現の拡がりとともに」というテーマのもと、埼玉県立近代美術館で、著名な音楽家を招いての電子音楽のコンサート(「MOMAS 空間音響ライブ」)や、研究生もまじえ広く一般の人たちと「ヘンテコな音楽を」作り、しかもその作品に喜びを感じてしまうようになろう!という趣旨のワークショップ(「MOMAS 音モンタージュワークショップ」)など多彩な企画を実施し、多くの人たちにこの分野の可能性をアピールしてきた。

MOMAS 空間音響ライブ
MOMAS 空間音響ライブ(2009年)

3年目となる今年度は、まちや美術館で聞こえる様々な「物音」に改めて耳を澄まし、新しい「音の風景」を紡ぎだす「MOMASサウンドスケープワークショップ」(11月28日(日))、身の周りのどんな音でも音楽になることを体験できる「MOMAS音モンタージュワークショップ」(12月19日(日))、そしてゲストを迎えてのシンポジウムとピエール・シェフェール氏(1910-1995)を題材にしたドキュメンタリー映画の上映会(2011年1月16日(日))を実施するほか、美術館1階エントランスホールにて研究生たちと一緒に「サウンド・オブジェ」(11月16日(火)〜2011年1 月16日(日))のインスタレーションを行う。一過性のイベントを行うのでなく、連続性のあるプロセスを経てもらうことで、参加者により重層的な感覚の拡張を促す。
「これが新しい音楽です!という主張を押し通すのは無意味だ。そういうのはある特定の文化に属する人たちの間でしか成立しない」と柴山氏は言う。ともすれば「この音楽は高尚なんですから」と偉そうになってしまいがちな現代音楽・美術館という領域の中に、「ヘンテコ」というどんな人でも自由に出入りできる遊び場を設け、誰かが作った音楽ではなく、誰もが聞こえている「音」を流し込むことで、やる側/見る側、教える側/教えられる側といった今まで当たり前だった関係から、お互いにもう一歩ずつ踏み出すことができるのかもしれない。(S.N.)

SAITAMA連携美術館情報

ひろがる・つながる ワークショップ

美術館ワークショップに参加したことはありますか?例えば埼玉県立近代美術館では、展示作品をじっくり味わう鑑賞講座や技法体験工房、川口市立アートギャラリー・アトリアでは、アーティストを講師に招いての創作活動が盛んです。これらに共通しているのは、参加者同士が親しく会話し、手や体も動かしながら、言葉を超えたコミュニケーションが生まれること。アートを身近に楽しむ試みが、埼玉県内各地の美術館でひろがっています。


うらわ美術館
「多世代交流ワークショップ」(2009年)

年齢や社会的立場が違っても、対等にやりとりできるのがアートの良いところ。この特性を最大限活かした多世代交流ワークショップが、11月13日(日)、23日(火・祝)にうらわ美術館で開催されます。対象は幼児から高齢者まで。自由な描画や写真を使った表現は、言葉以上に生き生きと作り手の個性を伝えます。互いに共感する場合もあれば、視点や感じ方の違いに驚く場合もあるでしょう。日常から一歩踏み出して創作に取り組む体験は、自分自身や生活の中の新しい発見にもつながるかもしれません。
内容手法も様々に、その日出会った人同士の心と世界がひろがる・つながるワークショップ。お近くの美術館でぜひ体験してみてください。(A.O.)

今年もやります。SMFラウンドテーブル2010

12月18日(土)10:30 〜17:00 埼玉県近代美術館講堂

SMFラウンドテーブル2009
SMFラウンドテーブル2009

昨年に引き続き、今年もSMF ラウンドテーブルが開催されます。ラウンドテーブルって何?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、イメージ的には円卓会議。アート・建築・ダンス・パフォーマンス・音楽・文学・街づくりなど、様々なジャンルで活動している方々が、同じ立ち位置で情報を共有する場です。
実際にこの場で新しいコラボが生まれ、続々と実現しています。今回はどんな展開になるのでしょうか…今から楽しみです。自分の活動を紹介したい、発信したい、つながりたいと思っている皆様のエントリーをお待ちしています!(H.O.)

参加申し込み

エントリーシート①に記入の上、メール(SMF.info@artplatform.jp)、FAX(048-824-0118)、または郵送(〒330-0061 さいたま市浦和区常盤9-30-1 埼玉県立近代美術館内)で「SMFラウンドテーブル2010」係宛て12月10日必着でお送りください。エントリーシートは下のボタンをクリックして出力していただけます。エントリーシートの送付をご希望の方はSMF事務局(tel:048-824-0110)までお申し付けください。
エントリーシートエクセル版 エントリーシートPDF版

アートバンク登録

参加団体・個人の活動概要を紹介するファイルを作成、ラウンドテーブル2010参加者に配布するとともに、このホームページに掲載します。登録ご希望の方は、エントリーシート②(アートバンク登録用)をご提出ください。
(エントリーシート②は、上記エントリーシート①と同じファイルに含まれています。)

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