SMF Press Vol.3(2010.11.1)裏面

スズキと話そう

市民と行政が手をつなぐまち、川越の魅力を再発見!

今回の「スズキと話そう!」は、川越で活躍するアルテクルブ事務局長の草野律子さんと川越市立美術館教育普及担当の田中晃さんにお会いしてきました。秋晴れの気持ちのいい日曜日の川越は、観光客で溢れていました。今回はどんなお話が聞けるのでしょうか?

草野さんと田中さん

スズキ:私は川越に詳しくないのですが、「文化を作ってきたまち」というイメージがあります。お二人はどんなまちだと捉えていますか?

草野:蔵造りに代表される川越のまち並みの特徴は、一時代に偏らず各時代に繁栄し、江戸・明治・大正・昭和と時代を経るなかで、その時々に流行の造作やデザインを採り入れながら建築が共存してきたところでしょう。専門家による問題提起を受け、それに呼応する市民により、昭和40年代から始まったまち並み保存運動が市民により継続され、現在のまちの元気につながっていると思います。文化を創り守るのは、市民の「まち」に対するプライドではないかと考えています。

田中:私は生まれも育ちも川越です。高校時代から京都に関心があり、休みになると寺巡りをするために京都を訪れていました。そんな経験から川越の地域文化の魅力をもっと発信していくべきだと思っていました。実は、市単位だと、京都・奈良についで、川越市は3番目に寺の多い場所。川越で中学美術教師になった時も、川越の地域性を活かした授業を行っていました。現在の美術館の立場では新しいものと古いものを繋ぎ、新しい魅力を発信するのが教育普及担当である自分の仕事だと思っています。

スズキ:どのようなことにこだわりながら活動をしていますか?

時の鐘

草野:アートを日常に落とし込みたいと思っています。「あるってアート2008」では,アーティストが川越のまち並みから感じ取ったものを作品化してもらったり,小学校でワークショップをしたり、地域に根差した活動を行いました。アートの存在によりその空間の特性が表れてきます。また、「まち」をアートの視点で歩くと、「まち」を見直すきっかけとなります。居心地のいい「まち」がどういうものか見えてくる、そして「まち」を造ってきた先人たちの知恵も見えてきます。まち並みが美しくなれば育つ人の心も豊かになると感じます。

あるってアート2008
あるってアート2008

田中:美術館は、年代も国も関係なくたくさんの方に対して発信することができます。美術は、生活の中から引き離された物だと考えられがちですし、学校ではいまだに上手に(そっくりに)描くことが良いといった指導があるような気もします。しかし、学習指導要領も変わり、その人にあった自分なりの楽しさを見いだすことが一番大切だと思います。美術館から学校や社会に発信することで、川越の動きに刺激を与え、文化意識を高めていくきっかけをつくるのも教育普及の仕事の一つです。行政の慣例や前例を打破できるのも実はアートの仕事。戦略的にアプローチすれば、アートだからできることがたくさんあります。アートは新しいものと古いものをつなぎ未来を作る架け橋となるものだと思います。

スズキ:お話ありがとうございました。行政と地域がバーサスの関係ではなく、コラボレーションをしていく関係なのですね。11月20日(土)~ 23日(火・祝)川越の旧織物市場で行われる「交差するまなざし」では、作家と子ども・地域と行政がアートで交差する時間となるはず。川越というと小江戸のイメージですが、イメージは人が作りだすもの。まちのことを考える一人一人に支えられ、まちが作られていくのだと取材で改めて感じることができました。今回の企画を通してまた新しい川越の魅力を発見できるのが楽しみです。(M.S.)

草野律子:建築士・大学講師・アルテクルブ事務局
埼玉県川越市生まれ。東洋大学工学部建築学科卒業。建築設計事務所パートナー。個人住宅を中心に、集合住宅、工場、学校、図書館、病院、ギャラリー等の設計活動を行っている。最近は、ボランティア活動にも積極的に関わり、「川越・蔵の会」、アートとまちづくりを支援する「アルテクルブ」など、建築と「まち」をつなぐ活動を行っている。最近の作品掲載誌/建築設計資料76児童文化活動施設『東京子ども図書館』、医院建築22・医院建築秀作事例集『うつのみや痛みのクリニック』、チルチンびと28『S邸』、住宅建築2009年8月号『落葉松山荘』。現在、東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科非常勤講師を兼務。

田中晃:川越市立美術館主任
高校卒業後、日本文化を肌で感じたく単身京都で学生時代を過ごす。その後、中学校美術教師として川越市内4校を経て、2003年度より埼玉県立近代美術館の学校教育普及担当として勤務。そこで、学校における美術科教育と美術館における美術教育について考えつつ、美術と人々の関わりを探ってきた。その後、2009年には中学校に異動するも、翌2010年に地元の川越市立美術館勤務を命ぜられる。現在、美術館がアートステーションとして身近に存在し、美術が学校を変え、まちを変え、社会を変える原動力となるための様々な仕組みを画策中。

「アート井戸端かいぎ」印象記

8月1日(日)「なぜ人はお金にならない事をするのか」
10月3日(日)「twitter・mixi の可能性」

今回のお題では「お金にならない」という文言をあえて加えてみました。「お金が全てじゃない」とか「お金で買えないものがある」ということには、誰も(私もです)が同意するでしょう。文字通り、芸術はそもそもお金にはならないけれども、そういう価値基準には属さない「何か」なのでしょう。
ではその「何か」とは何なのでしょうか。「芸術は素晴らしいものなのだから、その『何か』は素晴らしいに決まっているじゃありませんか」という意見が聞こえてきそうですが、なぜ、どんなふうに素晴らしいのかということを考えてみると芸術に対する考えが一歩前進するのではないでしょうか。
ところで、近代以降、芸術の役割は大きく変化して、一般的な常識から考えるとどういうことなのかさっぱり理解しにくい芸術が多く生み出されました。その「一般的な常識」は言うまでもなく社会的なルールによって形成されます。そのルールは人間の振る舞いから形成されていくのですが、同時にその社会的なルールは人間の振る舞いを規定します。であれば、芸術は、私たちを規定している一般常識や社会的ルールを、未来に向けて少しずつ押しひろげるためのカンフル剤のような役割を果たしているのかもしれません。(T.S.)

アート井戸端かいぎやっと秋らしい天気になった、心地よい午後の一時。美味しいスイーツと紅茶をひとくち…。というのも良いのですが、SMFのアート井戸端かいぎは熱いです!! まだまだ夏です。定期的に開催している井戸端かいぎでは、ぐるっと円になり、わいわいと楽しくお話をしています。
今回のお題は主にtwitterやmixiの活用についてでした。今や多くの著名人も使っているこれらのメディアで、SMFの活動をもっと多くの方に知ってもらえないだろうか? そんなことを考え、これらのメディアの使い方や活用方法をレクチャーしました。そして参加者全員で、それぞれのメディアをどのように使ってゆけば良いのか意見交換を行いました。
こうしてSMFではまず、mixiを使ってみようということになりました。mixi内のコミュニティ検索で『Saitama Muse Forum』と検索していただくと、SMFのコミュニティが見つかります。これからこのコミュニティで、どんどん情報発信をしますので、皆さんも是非のぞいて行ってください。
また、次回のアート井戸端かいぎは12月4日(土)です。どうぞお気軽に遊びに来てください。(H.S.)

NHKさいたまのFMラジオ番組
「日刊さいたま〜ず」に生出演しました。

スタジオ内部のスケッチ
イラスト:青山恭之

9月1日、SMFの活動を紹介するため、中村誠さん、藤井香さん、青山恭之の三人で「日刊さいたま〜ず」に出演しました。緊張しましたが、リポーターの下村寧(しずか)さんの質問に答えながら、15分間のオンエアー中に、スタジオ内部をスケッチしました。 (Y.A)

執筆:(S.N.)野本翔平/(A.O.)小野寺茜/(H.O.)小田浩子/(H.S.)齋藤はるか/
(M.S.)鈴木眞里子/(T.S)柴山拓郎/(Y.A.)青山恭之
編集:SMF広報委員会 発行:「交差する風・織りなす場」実行委員会
〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1 埼玉県立近代美術館内
問い合わせ:SMF.info@artplatform.jp
文化庁 平成22年度美術館・歴史博物館活動基盤整備支援事業
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