今年度の新企画、SMFアート寺小屋の第1回が9月29日、埼玉県立近代美術館講堂で開催されました。SMFが目指すアートプラットフォームとはいったいどのようなものなのかについて、活動開始から5年を経た今、もう一度原点に立ち返って考える機会を持つことがこのアート寺子屋の重要な目的の一つでもあります。今回は、アートを創り出すという行為が現在の社会とどのような結びつきを持っているのか、特に現代音楽などの先駆的芸術表現を念頭に模索し、イメージを共有できる場をつくることを目指しました。この日は先端芸術音楽創作学会との共催というSMF初めての試みでした。私柴山拓郎、塩野衛子さん、星(柴)玲子さんによる研究発表に続き、『考えられないことを考えられるようになること(1)~逸脱する芸術表現』という、この日のテーマによるパネルディスカッションを、同学会会員の沼野雄司さん(音楽学)、古川聖さん(作曲家)、松村誠一郎さん(メディアアーティスト)、SMF運営委員の高橋博夫さん(俳人)と、ゲストとしてお迎えした美術評論家の伊藤俊治さんで行いました。
芸術表現が歴史とともに大きく変容を遂げてきたプロセスについて、パネラーのそれぞれ独特の視点による解釈や意見交換がなされました。その中で特に印象的だったことは、先端的な芸術表現の「先端性」が、ある単一の方向を向いている流れの「先端」を指しているとは限らず、例えば手を広げた5本の指先はそれぞれ別の方向を向いていながらもそれぞれ先端である、という多様性を見失いがちではないだろうか、という視点を共有したことです。また、伊藤さんは、新たな芸術表現の「意味不明性」を、私たちが言語や意識を獲得する以前からの「神がかった」儀礼に伴う前音楽的行動の記憶として捉え、私たちがこれから獲得する新たな音楽が、実際には私たちが種としてかつて経験していた記憶の再生である可能性を指摘するなど、人類学的な視点までも含んだ幅広い議論が展開しました。内容の濃さが、2時間という時間を感じさせないパネルディスカッションでした。(T.S.)
そろそろ世代を超えた長寿命の住宅が望まれているんだとの政策、確かに、成長から持続へ、パラダイムシフトのまっただなかにある現代にあってはまっとうな考えかもしれない。しかし、ヘンな音楽をつくっている仲間(さらに彼は典型的なB型なのです)と一緒に企画していると、「一度っきりの人生、その時々、最も相応しい住まいで暮らしたいのも人情、だから住居は短寿命」と、素直な僕でもひねくれてものごとを見るようになってしまった。そこでテーマは假設の知恵。
假設とは必要に応じてかりに設けること。必要が何らかの変化を受容するためならば、応じた假設が生じる。震災などの受動的な変化には假設住宅。ライフステージの変化のための改装や転居は次のステージまでの假設かもしれないし、能動的なライフスタイルの変化にもこの風土の建築は木構法で応じてきた。11月25日、お話は内田祥哉さん。
ヘンなことをするアートの立場も、もしかするとそれによって日常に変化を引き起こす假設ではないだろうか。蛇足だが假設は仮設の正字である。(K.M.)
アリットフェスタ2012 特別展「茶の美探訪 アリット茶道具名品選」
11/1~12/9
「心の時代」を本展示の主軸にして、アリット茶道具コレクションの名品の魅力をお届けします。
常設展示資料特別公開「アリット浮世絵コレクションから~お茶と浮世絵展示~」
10/24~12/9
特別展の実施に合わせ、館蔵浮世絵コレクション約200点の中から、代表的な作品19点を展示します。
「日本・オブジェ 1920-70年代 断章」
11/17~2013/1/20
日本でのオブジェの登場と、それが美術とその周辺のさまざまな分野へと拡張してゆく様子を、主に1920年代から70年代を通して紹介します。
「コレクション展 描かれた『浦和』から」
11/17~2013/1/20
浦和近辺の風景を主テーマに、地域ゆかりの美術家の作品を「ぶらり・まち歩き」の趣向で展示します。
開館10周年・市制施行90周年記念特別展Ⅲ「小江戸川越江戸絵画 職人尽絵と三十六歌仙」
11/6~12/16
重要文化財、狩野吉信《職人尽絵》と岩佐又兵衛《三十六歌仙額》を中心に、川越にゆかりの深い近世絵画の数々の名品を一堂に公開します。
丸沼芸術の森所蔵「ベン・シャーン展—線の魔術師—」
11/17~2013/1/1
「丸沼芸術の森」(埼玉県朝霞市)のコレクションから、近年新たに所蔵となった初公開の絵画・ドローイングを含むおよそ250点によって、ベン・シャーンの魅力を紹介していきます。
今回は、うらわ美術館をピックアップします。
11/17より開催中の「コレクション展 描かれた『浦和』から」には、地域ゆかりの作家が描いた『浦和』が、写真と地図とともに展示されています。「どの場所を描いた作品か?写真で見ると今はどんな様子か?など、なかなか面白い展示かと思います。小中学生に見せたいです。」とは、教育普及担当の田島さんの談。作品をもとに、浦和のまちへの興味が深まりそうです。まちとの関係で思い出されるのは、今夏第一回を経た《アートでつなぐ人とまち・アートフェスティバルうらわ2012》。美術館もワークショップを同時開催する形で協力し、知り合った者同士顔を合わせれば「次はこんなことをやりたいね。」と会話が弾むのだとか。新旧織り交ぜた『浦和』の魅力をアートで浮き彫りにしつつ、まちと美術館とが一緒に活気づいていけたら良いですね。およそ2ヶ月間の設備工事を終え、再スタートしたうらわ美術館。館内を照らすLEDの真新しい光の先には、どんな未来が開けていくでしょうか。( A.O.)