行田は埼玉県北部にある人口約85,000人の市です。古くは日本一の足袋の生産地として知られ、また最近では近く映画も公開される時代小説「のぼうの城」の舞台としても知られるようになりました。
僕はこのまちに生まれ、このまちで育ってきました。昔はただ何とはなしにここにいましたが、今は自分はここにいたいとはっきり思いながらここにいます。
僕にそう思わせるのは、このまちやその周辺にいる素敵な人たちの存在です。ここら辺の風景や空気感も好きですが、僕にとってはやはり彼ら彼女らがいるということが、僕がここにいたいと思う一番の理由です。
近年は各地で頻繁に地域再生のためのアートプロジェクトが行われています。このまちも衰退が顕著なまちの例外ではないことと、僕自身が表現活動を行っていることを考えれば、このまちでもアートプロジェクトを、と考えるのは自然なことで す。しかし同時にそれは、すでにかなりの資本と時間と労力を費やしながらも、それに見合った成果が現れることはごくごく稀であるということが既知となったプログラムを、それと知りながら借用するという、創造性のない選択にもなりかねません。
美術館の目的が美術作品を収蔵したり展示したりすることに留まらないのと同じように、このまちでアートをやることそれ自体が目的ではないのです。僕がこのまちにいたいと思う最大の根拠は、近くにいる人間たちの存在です。彼ら彼女らと共有すべきものはアートだけではないはずです。アートという変幻自在の磁石を、よく見ればそこかしこにあるこのまちの隙間に、少しずつ置いていけば、きっとそれが素敵な出会いを引き当ててくれると思います。
長いこと磁石に触れているとそれ自身に磁力がなかった物質も自然に小さな磁力をまとったりします。何と何がくっつくかは予測不能です。だんだんと数が増えて、大きな磁場が生まれることもあるかもしれないし、逆に反発しあって小さな点をたくさん作るかもしれません。どんな形になるかは重要ではありません。どう動かすかが大切なことです。僕がやるべきことは、ゆっくり歩きながらこの町の隙間を探し、一つ一つ丁寧に、その小さな石を置いていくことです。(S.N.)
2012年2月3、4日、SMFの協力委員をしている美術家・浅見俊哉さんと、若手及び中堅舞踊家たちによるコラボレー
ション「コレオグラファーの目vol.9~青の世界のフォトグラム、光を紡ぐムーブメ
ント~」が、彩の国さいたま芸術劇場1階情報プラザにおいて開催されました。
情報プラザ中心にあるガラス張りの吹き抜けは、屋内外の光を複雑に反射して美しく、その空間自体からもテーマが醸し出されます。「光・交わり・ぽっかり空いた間」などが、私に受け取れるテーマでしょうか。舞台芸術を観に来る観客は、演目からだけでなく、建物が所有するこのような空間からも、知らずしらず緊張の糸を解されていくのだと思います。
さて、この空間を更に際立たせたのが浅見さんと舞踊家とのコラボレーションでした。3日「ムーブメントとフォトグラム〈青の世界〉」では、ダンサーの等身大ポーズのフォトグラム作品を事前に制作し、それら12点を吹き抜け円周に吊るして踊る、というものでした。上演された中でも「原風景」というダンス作品は、フォトグラムを通して見え隠れする様々な記憶を観客と共に辿るというような、はかなくて美しい作品に仕上がり、観客を魅了していました。
一方、4日「電飾ムーブメントは何を語るか?」では、電飾を体に巻きつけたダンサーが作品を上演し、その電飾の動きを写真に起こして、観客の目の記憶を辿るというものでした。
電飾を付けたダンスを観る面白さに加えて、空間と光のコラボレーションも美しく、また、浅見さん撮影の写真作品が、各々のダンス作品の本質を捉えていることや、瞬間でなく継続した時間を捉えているということに驚きを覚えました。
SMFで知り合ったアーティスト同士が様々な実験を試み、人々の心や考えを覆すような楽しい瞬間を、これからも作っていけたらいいな、と思う2日間でした。(K.F.)
今回「コレオグラファーの眼」を舞踊家の皆様とつくる中で、ひとつの試みを提案しました。それは「身体表現の動的な時間と、撮影された瞬間的で静的な時間を共存させたらどうなるか?」ということです。結果、感光紙を使ったフォトグラムや電飾を身に纏った演技の長時間露光撮影は、動的な時間と静的な時間の架け橋になるような効果がありました。今後も異なる表現者との関わりを通して、お互いの表現に刺激を得られる機会になれば幸いです。( S.A.)
建築のお寒い現況を愚痴っていたら窓の外も雪景色だった。(K.M.)
シンプルにシンプルに。(M.N.)
最近はお金に興味があります。賃金、貯金、借金、税金、年金、交付金、助成金、投資金、寄付金など。(S.N.)
3歳の女の子が踊りを習いに来ました。彼女の一番の楽しみは、お稽古後の鬼ごっこのようです。(K.F.)
SMFは魅力的なコラボレーションが生まれる場だと改めて実感しました。(S.A.)