本年度も「Saitama Art Platform形成準備事業」*の一環として、入間市博物館アリット、うらわ美術館、川口市立アートギャラリーアトリア、川越市立美術館、埼玉県立近代美術館の五つの連携ミュージアムが所在する、入間、浦和、川口、川越、北浦和を中心に埼玉県内各地で、地域との結びつきを強化する多彩なアートプログラムを実施しました。
今年度の概略と印象的な事業を紹介したいと思います。**
入間では、真夏の暑さを吹き飛ばす「夜のアリット 光のフェスタ」が行われました。地元ゆかりの若い美術家や音楽家、ダンサーを講師に招き、隣接する東野高等学校の美術部の協力を得ながら、子どもたちとアートなお化け屋敷をつくって楽しむ、ワークショップ&フェスティバルです。夜のミュージアムに予想を超えた子どもたちの創造パワーが炸裂する一夜となったようです。
浦和では、継続してきた多世代交流ワークショップの第4弾。今回はにおいから発想される色やかたちをパズルのようにつないで立体的な展開を楽しみました。また夏休み終盤に開かれた「ひとのかたち カラフル人形をつくろう」は、「アートフェスティバルうらわ2012」とリンクし、参加者がまちをパレードしフェスタのステージに登場するなど、商店街や街との交流を深める契機となりました。
川口では、アトリアの名物展となってきた「川口の匠vol.2」にあわせて、盆栽名人の指導によるミニ盆栽つくりのワークショップや「アート作品から見る盆栽の魅力」と題した鑑賞講座、禅寺の森に分け入り自然を感じながら樹木をフロッタージュする「ドローイング散歩」を行いました。川口の昔を感じさせる銭湯を訪ね歩き昭和文化を振り返る「銭湯のある街歩き」の続編も開催され好評でした。
川越では、手づくりのアートフラッグでストリートを彩る「ミュージアムロード」プロジェクトを昨年に続いて展開し、市立美術館と旧川越織物市場を結ぶ展示を行いました。フラッグの制作・展示を通してさまざまな方々の交流・協力が生まれてきました。また織物市場でのクラフト市は好天にも恵まれ大勢の来場者でにぎわいました。この歴史的建造物の活用への一石となることが期待されます。
北浦和では、埼玉県立近代美術館の開館30周年と連動し、多彩なプログラムが組まれました。2回にわたって開かれた「MOMASの扉スペシャル」では、空間を体で感じたり、自由な発想で音と美術作品をつないだりして、新たな鑑賞を試みました。「コレオグラファーの目・スペシャル ! 」では、夏に来場者の人気投票で選ばれた作品を中心に、創作ダンスの新作がつくられ、展示室や館内外の各所を回りながら、美術とダンスとの新鮮な出会いを楽しみました。「SMFああっと ! ファクトリー 共鳴する空間̶詩・美術・建築・音楽・ダンス̶」は、さまざまなジャンルの人財が集うプラットフォームとしてのSMFの性格をうまく反映したプログラムとなりました。ヒアシンスハウスの会による詩人・立原道造のパステル画や建築模型の展示、グルグルハウスの美術家9名が立原の詩に挑んだ美術作品を展示したコーナー、多彩なSMFのメンバーが「部屋を着る/音を灯す/おどりを編む」と題して、事前の打ち合わせやワークショップを積み上げて、子どもたちと創造した段ボールの都市・音の時空・ダンス。フィナーレの「かいじゅう・街に現れる ! 」では子どもたちの笑顔が弾けました。
北浦和西口銀座商店街との連携プログラムでは、昨年の回遊美術館Ⅱで生まれた商店街のマスコットキャラクター「きたうらワン」の商店街デビューと今後の成長・活躍を祈って、「きたうらワンと探そう ! 街のステキ」、「きたうらワンとアートパレード」の二つのワークショップを開催しました。
こうしたプログラムは、単にミュージアムの地域へのアウトリーチ活動にとどまらず、アートの視点から地域の再発見を促したり、各地域の意欲的な人材や面白スポットを発掘し、つながる場を提供したりと、さまざまな効果が認められます。またプログラムを通じて知り合った同士が、交流を深め新たにコラボレーションをはじめるなど、ひろがりを見せています。(裏面へ続く)
*文化庁 平成24年度文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業(ミュージアム活性化事業)
**各事業の詳細については平成24年度『記録集』に掲載しています