ラウンドテーブルのねらいのひとつに、場所・地域と向きあうことの意味を考えることがあると、僕は感じています。
近代芸術の歩みのなかには、抽象化というベクトルがありました。表現の純度を高めようと、具体的なものを遠ざけてきたのです。しかし今、例えば新潟の芸術祭にみられるように、具体的な場所の環境と積極的に関わろうとするアートに注目が集まっています。また、アーティスト・イン・レジデンスというのも、住むことで場所と濃密に関わるなかでの表現が問題になってくるものです。どんどんグローバル化される現代に、場所・地域と向き合って活動されている方々と円卓を囲んで語り合うイメージです。
今年度、ラウンドテーブルと似たような集まりに、2つ参加しました。1つは、建築学会の埼玉支部が中心になっている「交流展」というもので、県内の、それぞれの地域でまちづくりなどの活動に取り組んでいる、主に建築関係の方々の活動発表会。そこでは、ぼくも「うらわ建築塾」について報告しました。もう1つは、県の文化振興課の主催で、芸術活動に対する助成金をもらっている団体が、その成果を発表する「文化芸術拠点創造事業成果報告会」というもの。使われなくなった建物をリニューアルして、美術や音楽、地域振興等の活動を展開する時、そのためのハードやソフトに県が助成をしているのです。
2つの会ともに興味深かったのですが、時間の制限もあり、どうしても単発の発表会で終わってしまった感じがします。その点、今年のラウンドテーブルでは、先行した「ああっと!ファクトリー」でごいっしょした「グルグルハウス」の
メンバーからお二人の発表があり、さらに年があけて行われた「SMFさんなすび展」ではラウンドテーブルで発表された方・参加された方の多くがプロジェクトを展示されて、「つながり」が生まれ、大きな意味をもっていたと思います。それは、これから先のSMFの活動にも「つながり」を予感させるものでした。
ラウンドテーブルに集う方々は、それぞれ個性的なのですが、前後の「つながり」のなかで、より立体的に出会えたような気がしました。それぞれの方の、ご自身の拠点や特別な場所との関わりをみていくと、アートの表現が、具体的な場所や時間を生きることと背中合わせになって生まれていることに気づかされるのです。(Y・A)