SMF Press Vol.11(2012.9.20)裏面

2012年10月20日
鴻巣アート散歩「画家と詩人・水と街道をたどる」

運転免許センターだけではない意外な鴻巣

須田剋太自画像
▲須田剋太自画像

鴻巣市は、関東平野の北部にあって、ほぼ平坦な土地。山や海など絵はがきになるような風景がないかわり、大きな災害もなくて暮らしやすくはある。そこそこに穏やかに過ごしていける土地は、アートが生まれるとか、傑出した人物がでるには適さないようにみえる。
そこに生まれたひとりの画家とひとりの詩人を手がかりのひとつとして、鴻巣を歩いてみたい。
画家・須田剋太(1906年鴻巣-1990年兵庫県西宮)は、アスファルトの物質感にひかれて国道の舗装を剥がしたり、東大寺にいそうろうして絵を描きまくったり、ひたすらアートに突き進んだ。

秋谷豊 ラーメン文字
▲秋谷豊 ラーメン文字

詩人・秋谷豊(1922年鴻巣-2008年さいたま)は、平野に育ちながら高みに憧れ、ヒマラヤに登った。孤独な詩作にとどまらずに国際的な詩人会議を開催し、言葉や文化を異にする詩人たちとの交流にも大きなエネルギーを費やした。
ふつうに画家や詩人として思い浮かべる姿を大きく越え破るような、これほど並みはずれた人が、ゆったりと穏やかな土地からどうして生まれたろう?
そうしたことに回答がすぐあるわけでないが、かすかに念頭において、荒川と中山道に貫かれたまちの、ちょっとかわった風景を見てまわる。

赤物
▲赤物

鴻巣市産業観光館ひなの里には、2011年に国の重要無形民俗文化財に指定された「赤物」が展示されている。「赤物」は厄除けの赤い色に塗った玩具だが、桐箪笥(きりだんす)の産地だった鴻巣では、桐を加工したあとにでるおがくずを固めて使ったことに特徴がある。
秋谷豊の墓がある光徳寺は、旧中山道からわずかに入ったところにある。すぐそばに市の水道の水源があり、うっそうとした木々に囲まれている。近くには良質で大量の水があって初めて成り立つ造り酒屋もあった。
宝持寺は、渡辺綱が創建したと伝わる寺。渡辺綱が妖怪「茨木童子」を打ち負かす場面を描いた歌川国芳の浮世絵を、立体木工で再現した大きな作品が本堂にかかっている。

改修工事中の武蔵水路このあたりを武蔵水路が通っている。利根川から荒川に水を引いて、埼玉と東京の都市用水につかわれている。利根川からの取水地点は、広大な水面でのウインドサーフィンの様子をしばしばテレビなどで見かける。その反対側、荒川への合流地点の景色は訪れる人もないが、珍しい風景が作られている。(開通して半世紀近く経ち、今は改修工事が行われている。)
須田剋太の生地に近い吹上駅前の公民館では、毎年秋に須田剋太の作品展が開催されている。今年は司馬遼太郎の『街道をゆく』に描いた挿絵が展示されている。
鴻巣駅から北鴻巣、吹上駅へとたどりながら、武蔵野の風景を見ていきたい。(Y.W.)

まち×匠×アートvol.2
川口の魅力を体験しよう!!

パレードが通るなかまち通り
▲昨年の〔銭湯のある街歩き〕の様子

▲興禅院

ものづくりのまち・川口には、風土から生まれたさまざまな文化があります。昨年にひきつづき、第二弾となる今回も川口のさまざまなスポットで展示・イベントを開催します。
その柱となるのが10月7日~11月15日、川口市立アートギャラリー・アトリアで開催する秋の企画展〈川口の匠vol.2 美しきフォルム〉です。昨年度からはじまったこのシリーズでは川口の優れた職人たちに着目し、今年は「美しいフォルム」をつくり出す3人の匠たちを紹介します。
また、さらに川口の魅力を身近に感じてもらうためにワークショップやまち歩き、鑑賞講座を多数開催します。10月7日には画家の東田理佐さんを講師に、興禅院やふるさとの森(川口市安行領家)を歩き自然の力を感じながら、樹木を墨でフロッタージュするワークショップ〔ドローイング散歩〕。13日には匠の一人である盆栽師の飯村靖史さんとご子息の誠史さんを講師に迎え、躍動的な盆栽が並ぶ盆栽園『喜楽園』(川口市赤山)にてワークショップ〔ミニ盆栽をつくろう〕。21日にはさいたま市大宮盆栽美術館の学芸員の方を講師に迎え、川口市立アートギャラリー・アトリア(川口市並木元町)のスタジオにて、アートの視点で盆栽の魅力を捉える鑑賞講座〔アート作品にみる盆栽の魅力〕。11月3日、17日には、庶民文化研究家の町田忍さんを講師にお招きし、川口駅周辺(3日)、西川口・蕨駅周辺(17日)にて、昭和の赴きがある商店街や路地、工場、銭湯などを歩いてめぐり、最後には銭湯に入浴することもできるまち歩き〔銭湯のある街歩き〕。など盛りだくさんで川口の魅力をご紹介します。
川口を楽しくするアートイベントで、新しいまちの魅力を発見してみてください。(K.K)


「ひとのかたち カラフル人形をつくろう」
ワークショップ報告

カラフル人形を抱いた子どもたち前号の記事でご紹介した“アートなパレード”。去る8月25・26日に実施され、15組の親子を含む計41人が参加しました。
講師の秋元珠江さんの指導のもと、一枚の布からハサミを使わず「ひとのかたち」ができていく不思議さ。そこに子どもの自由な発想や大人の知恵が加わって、個性豊かな人形たちが生まれていきました。
まちでは《アートでつなぐ人とまち・アートフェスティバルうらわ2012》が賑やかに行われていました。参加アーティストやお店の人と交流しながらパレードし、作品を連れ歩く皆が誇らしげです。親子や年齢などの垣根を越えて仲良くなった人もあり、到着した展示場で手をつなぎ合う作品を、見つめる参加者の気持ちもつながり合っている様子でした。( A.O.)

編集者のつぶやき…

五感で、いやいやそれ以上で楽しむアートですよ~。( R.K.)
10月20,21日は川越祭り、祭りとアートを楽しんでください!( A.T.)
【S】下半期【M】目玉はアート【F】ファクトリー。11/4はぜひMOMASへ!( A.O)
晴れるといいな( 水に負けないように)!(Y.W.)
秋は一番好きな季節です。匂いや光が、細胞に沁み渡るような感じがします。( K.K)

執筆:( R.K.) 草野律子/(A.O.)小野寺茜/(A.T.) 田中晃/(Y.W.)渡辺恭伸/(K.K)川﨑久美
編集:SMF広報委員会 発行:Saitama Art Platform 形成準備事業実行委員会
〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1 埼玉県立近代美術館内
問合わせ:
文化庁 平成24年度文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業(ミュージアム活性化支援事業)
表面にジャンプするボタン