アート竜巻フェスタ@URAWA T

2008年7月19日〜7月27日

7月はじめの第1回実行委員会の開催を経て、埼玉県立近代美術館を起点として県内各地を巡る《フェスタ》の第1弾《アート竜巻フェスタ@URAWAT》が開催されました。また風車の制作については、6月下旬にボランティア募集説明会を開き、美術館創作室を会場に7月から〈風のアトリエ−風車制作工房〉がはじまりました。

《フェスタ》第1弾のプロローグとなったのは、独特の竹のサウンドオブジェを使って、さまざまな場所でインスタレーションやプロジェクトを展開している不思議美術家・松本秋則さんによる〈アート散歩〉プログラムです。7月19日(土)〜21日(月・祝)の3日間、八百屋さん、お肉屋さん、お豆腐屋さん、お魚屋さんなど、店舗の軒先を中心に、北浦和西口銀座商店街の約30箇所に計40点のサウンドオブジェを設置しました。

オブジェは、モーターと電池によるもの、矢羽根に風を受けて音を出すものの2種に大別されますが、午前中に手分けして各ポイントに設置し夕刻に撤収という繰り返しで、商店街を訪れる方々にお楽しみただきました。

「涼しげで本当に綺麗な音。楽器によって色んな音があるのも楽しかった。とっても評判で、子どもたちも喜んでいた。」「通りがかりの人にも、お客さんにも大好評。楽器の音を聞きながら働くのも気分が良かった。」「3日間たっぷり楽しませてもらった。軒先のは、竹とは思えないような水音のような雰囲気で、店内のは軽やかで可愛らしい音。見た目も音も色んな種類があって、お客さんとの会話が盛り上がった。」など、商店街の方々にはたいへん好評でした。

サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)サウンドオブジェ(浦和)
—作品を設置するにあたって悩んだのは、近くを通り抜ける人に向けてはインパクトのある音がいいが、作品の傍で1日中働からなければならない店の人にとってはどうかということ。気掛かりだっただけに、店主からの「気分が良い」の一言はとても嬉しかった。竹の音の素朴さを褒めてくれる人が多かったが、(21日の〈空間音響ライブ〉とも比較して)おそらく発信源や仕組みが目に見えるから、印象が優しくなるのだと思う。音を聞きながら通りを進んでいくのになるべく強弱やリズムが変わるように設置したが、すべて計算づくではなく偶然性も取り入れるようにしている。偶然来た人が、音に誘われて辺りを散策するような効果を狙ったつもり。(19・20日の)夏祭りが終わって静かになってから、そんな雰囲気が達成できたと思う。スピーカーに邪魔されることなく、音の環境は3日目が一番良かった。
松本秋則(不思議美術家)

7月20日(日)には、関連事業として埼玉大学生による「KITAURAWART」が開催された。埼玉大学教育学部美術専修2年生ら24名が「芸術学概論」の授業の一環として、北浦和公園や北浦和駅西口市街を舞台に初めてのインスタレーションに挑んだもの。何度も現場を歩き試行錯誤しながらプランを練り上げて公園やまち空間での表現をそれぞれに試み、さまざまな発見や気付きの契機としました。

KITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWARTKITAURAWART

7月21日(月・祝)には、美術館講堂で4人の現代音楽作曲家によるオムニバス形式の〈MOMAS空間音響ライブ〜22個のスピーカーによる電子音響音楽の空間投影1〜〉(企画:柴山拓郎、協力:東京電機大学理工学部)が開催され、熱心な聴衆がサウンドから喚起され広がってくる視覚世界を思い思いに探索しました。美術館という視覚的に凝縮された場所でこのような試みが行われるのはとても興味深いものでした。

空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)空間音響ライブ(浦和)

7月22日(火)から27日(日)には、(関連事業)として「彩象2008 Final」が美術館一般展示室で開催されました。同展は団体や世代を超えて新たな絵画を求める画家たちが集う場として1999年から続いてきたものですが、最終回となった今回は42名の画家・美術家が参加して悼尾を飾りました。本事業との関連で美術家の根岸和弘氏を講師に迎え、風車づくりのワークショップ「アートの風をつくろう」が開催され、風車を掲げて走り回る子どもたちの歓声が会場に響きました。

7月26日(土)には、《フェスタ T》のピークとなる風車のインスタレーションが行われました。およそ30名のボランティア、協力者によって設置作業を行いました。根岸和弘さんのインスタレーション・プランは、美術館からこぼれ落ちた小さな風が小さく渦を巻きながらしだいに立ち上がり、伸びやかなラインを形成してまちへと展開していくという、〈風をはこぶ〉のオープニングに相応しいものでした。晴天続きで心配された地面の硬さも前夜にさっと一雨降ったことで解消され、初回ながら概ね順調に午前中2時間ほどで設置を完了しました。当初は500本からの出発を考えていましたが、広い野外での展開にはやはり量が必要との根岸さんのお話にみなさんエンジンがかかって、早くも600本を超える風車が北浦和公園に立ち並びました。初めて目にする新鮮で爽快な風景です。

道行く人たちもあちこちで足を止めひとときの道草を楽しみます。風車のラインに沿って散策を楽しむ人、撮影する人、子どもたちは飛び越したり息を吹きかけたり、さまざまな反応が見られました。手前の風車がゆっくりとそうしてしだいに早く回り出したかと思うと、波のように順を追ってラインの先頭まで伝わっていきます。通っていく「風」が確かに見えた瞬間です。風向きによっては、風の通り道となるラインの一部だけが回ることもありました。風車がまわると子どもも大人も一様に穏やかで輝いた表情に変わります。わずか数時間の展示でしたが、印象深い風景が心に刻まれました。

風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)風車(浦和)

夕方近く雨がぱらつきはじめたため、予定を10分ほど早めて撤収作業を行いました。開催までの準備期間が短く心配された最初のフェスタでしたが、まずは順調に最初の〈風をはこぶ〉ことができました。

(記録・文責:中村誠・《アート竜巻フェスタ》事務局)